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大阪高等裁判所 平成10年(ラ)18号 決定

抗告人(原審債務者) 破産者a株式会社破産管財人X

常置代理人弁護士 苗村博子

同 若杉洋一

同 石原真弓

相手方(原審債権者) 株式会社大和銀行

代表者代表取締役 A

主文

本件執行抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

第一本件執行抗告の趣旨及び理由

別紙「執行抗告状」及び「執行抗告理由補充書」(各写し)記載のとおり

第二当裁判所の判断

一  一件記録によれば、相手方は、破産者a株式会社(以下「破産会社」という。)との間で、破産会社は、相手方に対し、輸入担保荷物(信用状付き輸入にあっては、信用状の発行条件により相手方が所有権を有することになった荷、貨物をいう。)を相手方が破産会社に対して有する一切の債権の譲渡担保として提供する旨合意していたこと、相手方は、破産会社に対し、原決定添付別紙商品目録一、二〈省略〉の各商品の輸入につき信用状を発行し、上記輸入に係る商品につき原決定添付別紙担保権・被担保債権・請求債権目録〈省略〉の約束手形債権を取得したこと、上記各商品は上記輸入担保荷物に当たること、破産会社は、上記各商品を第三債務者(松下産業株式会社)に対し転売したこと、その後、平成九年一一月一二日、破産会社が破産宣告を受け、抗告人が同社の破産管財人に選任されたこと、相手方は、同月一三日、譲渡担保の物上代位に基づき、第三債務者に対する転売代金の差押命令を申し立てたこと(本件申立て)が認められる。

ところで、譲渡担保権は、破産手続においては別除権として扱われるものであり(会社更生手続と譲渡担保につき最高裁昭和三九年(オ)第四四〇号同四一年四月二八日第一小法廷判決民集二〇巻四号九〇〇頁参照)、また譲渡担保権者は、債務者が破産宣告を受けた場合であっても、担保目的物の売却により生じた代金債権を差し押えて物上代位権を行使することができるというべきである(動産先取特権につき最高裁昭和五六年(オ)第九二七号同五九年二月二日第一小法廷判決民集三八巻三号四三一頁参照)。

抗告人は、譲渡担保設定契約において代位物に対する優先的権利を認める旨の特約がない以上、物上代位は認められるべきではないと主張するが、譲渡担保権は目的物の交換価値を支配する権利であり、これを認める旨の特約の有無の如何を問わず、民法三〇四条の適用を認めるのが相当である。また、抗告人は、本件においては、破産会社が担保目的物の処分を許されており、処分した場合の売掛債権につき相手方は譲渡担保の予約をするなどの特別の保全措置を講じていないのであるから、担保目的物に対する追及権を放棄していたものと解すべき旨主張するが、抗告人主張の事情だけでは、直ちに相手方が担保目的物に対する追及権を放棄したものということはできない。更に、抗告人は、譲渡担保権に物上代位が認められるとしても、もともと公示を必要としない先取特権と異なり譲渡担保の場合には、一般債権者の差押えと同視すべき破産宣告により物上代位の行使は許されないと主張するが、そのように解すべき理由・根拠も認め難い。

以上のとおり、抗告人の主張はいずれも理由がない。

二  よつて、本件申立てを認容した原決定は相当であり、本件執行抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 中田耕三 裁判官 高橋文仲 中村也寸志)

〈以下省略〉

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